【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム
たとえば既存のクラシック音楽から全く違った様式や手法を試みたものが現代音楽と呼ばれるようになり、通常のスタイルのロックとは違ったアプローチを展開したポスト・ロックと呼ばれるジャンルがあったり、一定のジャンルにおけるサブジャンルは多く存在していますよね。
「フリー・ジャズも、まさに言葉通り前衛的な方法論やフリーキーな即興演奏が特徴的な、ジャズという括りの中で新たに生まれたジャンルです。
今回はそんなフリー・ジャズと呼ばれる作品の代表的な1枚や人気作を選出してみました。
決して万人受けするような音楽ではありませんが、興味を持たれた方はぜひこの機会に挑戦してみてください!
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【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム(1〜10)
AmajeloDon Cherry

フリー・ジャズの開祖的な存在、オーネット・コールマンさんとともに活動し、フリー・ジャズ史における重要作『ジャズ来るべきもの』や『フリー・ジャズ』などに参加したのが、アメリカはオクラホマ州出身のドン・チェリーさんです。
トランペット、そしてコルネット奏者であるチェリーさんは「ポケット・トランペット奏者」と呼ばれ、60年代においては多くのフリー・ジャズ系のミュージシャンと共演し、70年代以降はスウェーデンに定住して多彩なジャズ・サウンドを世に送り続けました。
チェリーさんの代表作の1つと呼ばれている『mu” First Part』は、1969年にフランスのジャズ・レーベルから発表されたタイトルです。
トランペットだけでなくフルートやピアノも担当したチェリーさんと、多くの作品でタッグを組んだジャズ・ドラマーのエド・ブラックウェルさんの2人だけで作り上げられた本作は、音楽家同士のスピリチュアルな対話の如きサウンド。
プリミティブな衝動を軸とした即興演奏から生まれたフレーズとリズムの応酬は、実験音楽という括りをこえた純度の高い創造物の結晶と言えるでしょう。
Globe UnityAlexander von Schlippenbach

1966年の11月、ドイツはベルリン出身で当時28歳だったジャズ・ピアニスト兼作曲家のアレキサンダー・フォン・シュリッペンバッハさんが結成した、フリー・ジャズを大所帯のアンサンブルで演奏するグローブ・ユニティ・オーケストラが、ベルリン・ジャズ祭にて演奏を披露し、聴衆に衝撃を与えました。
現代音楽の教育も受けていたシュリッペンバッハさんは、アメリカで始まったフリー・ジャズを現代音楽的な手法で解釈し、斬新なサウンドを構築したのです。
翌年の1967年にシュリッペンバッハさんのソロ名義でリリースされたスタジオ・アルバム『Globe Unity』は、ヨーロッパのフリー・ジャズの歴史において先駆的な作品となりました。
その後の精力的な活動も含めて、欧州フリー・ジャズの潮流を知りたければ必ずや聴いておくべき作品である、と断言できるでしょう。
フリー・ジャズ特有の即興演奏の中で、雰囲気や情緒に溺れない乾いた美学のようなものに、ヨーロッパ人としての、ドイツ人としての誇りを感じさせるのです。
Space Is the PlaceSun Ra

スピリチュアル、と書くとなんとなくうさん臭さを感じてしまう方も多いかもしれませんが、自らを土星生まれと称する伝説的な音楽家にして独自の宇宙哲学の持ち主、サン・ラさんの生み出したフリー・ジャズ~スピリチュアル・ジャズに広がる豊潤な音世界は、決してこけおどしなどではありません。
ジャズというジャンルの中で位置づけられているのは単なる偶然であって、あまりにも自由なサン・ラさんの魂を音として表現した結果、というだけな気もしますね。
1972年にリリースされた宇宙的傑作『Space Is The Place』は、タイトル自体がサン・ラさんの座右の銘であり、自ら「アーケストラ」と名付けた自身の楽団による演奏は、一切の音楽理論の制約から解き放たれた原始的な異国の祝祭のようです。
20分をこえる表題曲からして、アフリカン・リズムのグルーヴと飛び交うモーグとオルガンの響きでまったく違う世界へと聴き手を連れていってしまいす。
サンプリング・ソースとしてクラブ世代にも人気がある作品ですし、女性ヴォーカルの導入も含めて、サン・ラさんの宇宙に足を踏み入れるための入門編としても、ぜひ。
【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム(11〜20)
The Magic of Ju-JuArchie Shepp

1937年生まれのアーチー・シェップさんは、フリー・ジャズの歴史において欠かせないサックス奏者であり、1981年に公開されたフリー・ジャズのドキュメンタリー映画『イマジン・ザ・サウンド 60年代フリー・ジャズのパイオニアたち』にも出演している重要な存在です。
フリー・ジャズだけではなく、従来のジャズはもちろん、ブルースにR&Bといったブラック・ミュージックの領域においても作品を発表しており、一定のジャンルにとらわれない幅広い活動を続けている方でもあるのですね。
そんなシェップさんが1967年に録音、翌年の1968年に発表した『The Magic of Ju-Ju』は、まさにフリー・ジャズの世界で精力的な活動を続けていた60年代のシェップさんによる、攻撃的かつ過激な実験精神を全面に押し出した作品です。
重いテナー・サックスの響きと、アフリカ音楽からの影響が感られる原始的なリズムを生み出すパーカッションによる呪術的な雰囲気は、まさにおどろおどろしい骸骨のアルバム・ジャケットそのものといった趣。
急進的な60年代フリー・ジャズの醍醐味を味わいたい方は、ぜひ一度体験してみてほしいですね。
Alto Improvisation No.1阿部薫

伝説にその名を刻み、天才や鬼才などと呼ばれる芸術家は、私生活が破天荒であったり、生き急ぐように若くして亡くなってしまう方が多いですよね。
日本のフリー・ジャズの歴史における最も有名なサックス奏者といっても過言ではない、29歳という若さでこの世を去った阿部薫さんは、まさに天才であり鬼才と呼ばれるにふさわしい存在でした。
作家であり女優でもある鈴木いづみさんとの結婚生活は、後に巨匠若松孝二さんによって映画化されていますね。
そんな阿部さんの音楽スタイルはほとんど独学で身に付けたそうで、従来のオーソドックスなジャズとは違い、最初から自由な魂の中で生まれた、言葉の意味そのままの「フリー・ジャズ」と呼ぶべきものです。
そんな阿部さんが1976年に発表したソロ・アルバム『なしくずしの死』は、20世紀フランス文学における異端の作家、ルイ=フェルディナン・セリーヌの著作からタイトルを拝借していることからもわかるように、破壊的な文学性と日本的叙情とが交互に迫りくる、まさに魂の名演が収められています。
決して気軽に聴けるような内容ではありませんが、阿部さんの人となりに興味を持たれた方は、ぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか。
Titan MoonEvan Parker

1970年にリリースされたアルバム『The Topography of the Lungs』は、ヨーロッパのフリー・ジャズの歴史において非常に重要とされている1枚です。
イギリス出身のサックス奏者、エヴァン・パーカーさんの自己名義による初のアルバムであり、同じくイギリス出身で即興演奏のカリスマ的なギタリストであるデレク・ベイリーさんと、オランダ生まれのドラマー、ハン・ベニンクさんが参加しており、まさに当時の欧州フリー・ジャズ界における異能プレイヤーが集まって生み出された作品と言えるでしょう。
全編に渡り繰り広げられる3人の即興演奏は破壊的かつ無秩序でありながらも、時折差し込まれる静寂のパートが緩急をつける役割を果たしているように感じられます。
通常のバンド・アンサンブルとはまるで違う音世界は難解であり、フリー・ジャズをかなり聴き込んだ方でないと聴き通すのは難しいかもしれません。
3人がそれぞれの配置で演奏していますから、この作品を体験する際にはヘッドホン推奨ですね。
People In SorrowArt Ensemble Of Chicago

フリー・ジャズ系の代表的なバンドといえば、名前の通りシカゴ出身のアート・アンサンブル・オブ・シカゴでしょう。
シカゴのアフリカ系アメリカ人音楽家たちによって創立された非営利組織「AACM」のメンバーを中心として結成され、1968年にはレコード・デビューを果たしています。
初期の仕事としては、フランス出身のアバンギャルドなミュージシャン、ブリジット・フォンテーヌさんが1969年にリリースした名盤『ラジオのように』への参加などが挙げられます。
今回紹介しているアルバム『People In Sorrow』は1969年に発表されたもので、バンド・メンバーがヨーロッパに滞在時に録音されたもの。
『苦悩の人々』という邦題から、何やら高尚な雰囲気を感じ取ってしまうかもしれませんが、当時のメンバー4人による即興演奏から生まれたサウンドは、とくに前半は静寂なパートが多く盛り込まれ、混沌とは無縁の風景が描かれた非常にエモーショナルな世界です。
後半以降はフリー・ジャズらしい演奏の応酬もありながらも、テーマ性を持ったメロディは哀愁の響きを兼ね備え、アルバム全体的を通してもドラマティックな構造を持ち、意外に取っ付きやすいと言えるのではないでしょうか。