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【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム

たとえば既存のクラシック音楽から全く違った様式や手法を試みたものが現代音楽と呼ばれるようになり、通常のスタイルのロックとは違ったアプローチを展開したポスト・ロックと呼ばれるジャンルがあったり、一定のジャンルにおけるサブジャンルは多く存在していますよね。

「フリー・ジャズも、まさに言葉通り前衛的な方法論やフリーキーな即興演奏が特徴的な、ジャズという括りの中で新たに生まれたジャンルです。

今回はそんなフリー・ジャズと呼ばれる作品の代表的な1枚や人気作を選出してみました。

決して万人受けするような音楽ではありませんが、興味を持たれた方はぜひこの機会に挑戦してみてください!

【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム(16〜20)

3 Compositions of New Jazz

(840m)-Realize-44M-44M (Composition 6 E)Anthony Braxton

(840m) Realize 44M 44M (Composition 6 E) – Anthony Braxton
(840m)-Realize-44M-44M (Composition 6 E)Anthony Braxton

2000年代のポスト・ロックやオルタナティブ・ロックのシーンにおいて、圧倒的なオリジナリティを持った音楽性がリスナーにも同業者にも衝撃を与えたバンド、バトルス。

その初期メンバーであり、バンドを脱退後も先鋭的な実験音楽家として高い評価を得ているタイヨンダイ・ブラクストンさんのお父さんは、実はフリー・ジャズ界の巨匠アンソニー・ブラクストンさんなのですね。

1945年に生まれたブラクストンさんは、伝統的なジャズと同時にジョン・ケージさんやカールハインツ・シュトックハウゼンさんといった現代音楽家から影響を受けたアルト・サックス奏者です。

彼が1968年にリリースした初のリーダー・アルバム『3 Compositions Of New Jazz』には、ブラクストンさんをはじめとするマルチ演奏者の3人を中心として創造された前衛的なセッションが収められています。

不可解な記号や数字のタイトルの時点で思わず二の足を踏んでしまいそうですが、勇気を出して「こちら側の世界」へと一歩踏み出してみてはいかがですか?

Volunteered Slavery

Volunteered SlaveryRoland Kirk

『Volunteered Slavery』という相反する意味の言葉を並べたタイトルを名付けてしまう時点で、普通の感性の持ち主ではなさそうなことが分かりますよね。

そんな驚くべきアルバムを作り上げたローランド・カークさんは、幼児期に失明してしまったハンデをものともせず、さまざまな楽器を自在に操るだけでなく、なんと数本の管楽器を同時に吹いてしまうという曲芸のような技術の持ち主です。

インターネットなどでカークさんの写真を検索すれば、複数の楽器に囲まれた姿を確認できるはず。

実際に演奏しているシーンを動画などで見れば、単なる奇抜なアイデアを通りこした天才の所業であることも理解できるでしょう。

冒頭で紹介したアルバムは、そんなカークさんが1969年にリリースしたアルバムです。

スタジオ録音と1968年のニューポート・ジャズ・フェスティバルにおける演奏がそれぞれ収められ、根底にあるジャズ愛の中で自由に音楽を謳歌する姿がはっきりと刻印された、ソウルフルかつ美しい作品となっております。

リアルタイムで売れていたビートルズの『HEY JUDE』のフレーズが盛り込まれるなど、とにかく何が飛び出すか分からない1枚です!

People In Sorrow

People In SorrowArt Ensemble Of Chicago

Art Ensemble of Chicago – People in Sorrow (Full Album)
People In SorrowArt Ensemble Of Chicago

フリー・ジャズ系の代表的なバンドといえば、名前の通りシカゴ出身のアート・アンサンブル・オブ・シカゴでしょう。

シカゴのアフリカ系アメリカ人音楽家たちによって創立された非営利組織「AACM」のメンバーを中心として結成され、1968年にはレコード・デビューを果たしています。

初期の仕事としては、フランス出身のアバンギャルドなミュージシャン、ブリジット・フォンテーヌさんが1969年にリリースした名盤『ラジオのように』への参加などが挙げられます。

今回紹介しているアルバム『People In Sorrow』は1969年に発表されたもので、バンド・メンバーがヨーロッパに滞在時に録音されたもの。

『苦悩の人々』という邦題から、何やら高尚な雰囲気を感じ取ってしまうかもしれませんが、当時のメンバー4人による即興演奏から生まれたサウンドは、とくに前半は静寂なパートが多く盛り込まれ、混沌とは無縁の風景が描かれた非常にエモーショナルな世界です。

後半以降はフリー・ジャズらしい演奏の応酬もありながらも、テーマ性を持ったメロディは哀愁の響きを兼ね備え、アルバム全体的を通してもドラマティックな構造を持ち、意外に取っ付きやすいと言えるのではないでしょうか。

Solo Guitar Volume 1

Improvisation 4Derek Bailey

Derek Bailey ‎– Solo Guitar (full album) 1971
Improvisation 4Derek Bailey

イギリスが生んだ即興演奏のパイオニアであり、フリー・インプロヴィゼーションの代表的なギタリストと言えば、デレク・ベイリーさんです。

そもそも即興演奏とはその名の通り制約を設けずに演奏者の意思に沿って自在に演奏するものですが、音楽理論などが確立されていなかった太古の昔の音楽は、つまり即興演奏そのものであったと言えるかもしれません。

そんなことを念頭に置いて、ベイリーさんのソロ名義としては初となったアルバム『Solo Guitar Volume 1』を聴くと、また違った世界が見えてくるのではないでしょうか。

もともとはプロのギタリストとして熟練した腕前を持ったベイリーさんが、いわゆる商業音楽とは決別して自らが創始者の1人となったフリー・インプロヴィゼーションは、ギターのソロ演奏という形態で一般的に予想される音楽とは全く違うサウンドを生み出しています。

フリーキーなプレイの中で、突如「クラシカルなギター演奏」が差し込まれるところは、何となく英国人的ユーモアを感じさせますね。

Out to Lunch!

Hat And BeardEric Dolphy

アルト・サックス、バス・クラリネット、フルートを自在に操るマルチ・リード奏者であり、独創的なスタイルでジャズ史における巨人としてその名を残すエリック・ドルフィーさん。

オーネット・コールマンさんの名作『フリー・ジャズ』に参加するなど、ドルフィーさんはたしかにフリー・ジャズの歴史においても重要な仕事を残しているのですが、あくまで伝統的なジャズの文脈から端を発した前衛性、といった雰囲気があることが重要と言えそうですね。

ジャンルの枠組みの再構築ではなく、音楽理論を熟知した上で、アバンギャルドな創造性を展開していくというスタイルがドルフィーさんの音楽を唯一無二のものとしているのではないでしょうか。

そんなドルフィーさんが亡くなる数カ月前、1964年の2月に録音された『Out to Lunch!』は、全曲がドルフィーさんのオリジナル曲で構成されています。

ジャズの伝統とみずみずしい才能による革新性、フリー・ジャズらしい即興演奏と耳に残るフレーズが入り乱れるバンド・アンサンブルの妙は、自由奔放でありながらもがっちりした緻密性が感じ取れ、素晴らしい音楽体験を聴き手にもたらします。