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【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム

たとえば既存のクラシック音楽から全く違った様式や手法を試みたものが現代音楽と呼ばれるようになり、通常のスタイルのロックとは違ったアプローチを展開したポスト・ロックと呼ばれるジャンルがあったり、一定のジャンルにおけるサブジャンルは多く存在していますよね。

「フリー・ジャズも、まさに言葉通り前衛的な方法論やフリーキーな即興演奏が特徴的な、ジャズという括りの中で新たに生まれたジャンルです。

今回はそんなフリー・ジャズと呼ばれる作品の代表的な1枚や人気作を選出してみました。

決して万人受けするような音楽ではありませんが、興味を持たれた方はぜひこの機会に挑戦してみてください!

もくじ

【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム(1〜20)

Free Form Suite ~ フリー・フォーム組曲

Sun In The East高柳昌行

Masayuki Takayanagi – Sun in The East
Sun In The East高柳昌行

19歳という若さでプロのギタリストとして活動をはじめ、日本のフリー・ジャズ・シーンにおいて偉大な足跡を残した高柳昌行さん。

私生活は破天荒な芸術家を地で行くようなもので、幾度も逮捕されながらも裁判官に音楽家としての才能を惜しまれたというのもすごいですよね。

後に『あまちゃん』などの音楽を担当する音楽家の大友良英さんも、高柳さんのギター・レッスンを受けていたというのですから、その技術と才能は突出していたのでしょう。

今回紹介している『フリー・フォーム組曲』は、実際にオーディエンスを迎え入れたスタジオ・ライブという形で1972年に録音された作品です。

高柳昌行とニュー・ディレクション・フォー・ジ・アートという名義で発表された本作は、フリー・ジャズのみならず、ブルースやフォークなどの多彩なジャンルがまさに「フリー・フォーム」な演奏で表現された傑作であり、当時の空気感のようなものまで感じ取れる逸品となっておりますよ。

スピリチュアル・ジャズの歴史的な名曲『Sun In The East』をまずは聴いていただいて、その豊潤な音世界の一端を味わってみてください!

The Magic of Ju-Ju

The Magic of Ju-JuArchie Shepp

1937年生まれのアーチー・シェップさんは、フリー・ジャズの歴史において欠かせないサックス奏者であり、1981年に公開されたフリー・ジャズのドキュメンタリー映画『イマジン・ザ・サウンド 60年代フリー・ジャズのパイオニアたち』にも出演している重要な存在です。

フリー・ジャズだけではなく、従来のジャズはもちろん、ブルースにR&Bといったブラック・ミュージックの領域においても作品を発表しており、一定のジャンルにとらわれない幅広い活動を続けている方でもあるのですね。

そんなシェップさんが1967年に録音、翌年の1968年に発表した『The Magic of Ju-Ju』は、まさにフリー・ジャズの世界で精力的な活動を続けていた60年代のシェップさんによる、攻撃的かつ過激な実験精神を全面に押し出した作品です。

重いテナー・サックスの響きと、アフリカ音楽からの影響が感られる原始的なリズムを生み出すパーカッションによる呪術的な雰囲気は、まさにおどろおどろしい骸骨のアルバム・ジャケットそのものといった趣。

急進的な60年代フリー・ジャズの醍醐味を味わいたい方は、ぜひ一度体験してみてほしいですね。

なしくずしの死

Alto Improvisation No.1阿部薫

Kaoru Abe – Mort A Credit 1995 CD1 & CD2 (Full Album)
Alto Improvisation No.1阿部薫

伝説にその名を刻み、天才や鬼才などと呼ばれる芸術家は、私生活が破天荒であったり、生き急ぐように若くして亡くなってしまう方が多いですよね。

日本のフリー・ジャズの歴史における最も有名なサックス奏者といっても過言ではない、29歳という若さでこの世を去った阿部薫さんは、まさに天才であり鬼才と呼ばれるにふさわしい存在でした。

作家であり女優でもある鈴木いづみさんとの結婚生活は、後に巨匠若松孝二さんによって映画化されていますね。

そんな阿部さんの音楽スタイルはほとんど独学で身に付けたそうで、従来のオーソドックスなジャズとは違い、最初から自由な魂の中で生まれた、言葉の意味そのままの「フリー・ジャズ」と呼ぶべきものです。

そんな阿部さんが1976年に発表したソロ・アルバム『なしくずしの死』は、20世紀フランス文学における異端の作家、ルイ=フェルディナン・セリーヌの著作からタイトルを拝借していることからもわかるように、破壊的な文学性と日本的叙情とが交互に迫りくる、まさに魂の名演が収められています。

決して気軽に聴けるような内容ではありませんが、阿部さんの人となりに興味を持たれた方は、ぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか。

3 Compositions of New Jazz

(840m)-Realize-44M-44M (Composition 6 E)Anthony Braxton

(840m) Realize 44M 44M (Composition 6 E) – Anthony Braxton
(840m)-Realize-44M-44M (Composition 6 E)Anthony Braxton

2000年代のポスト・ロックやオルタナティブ・ロックのシーンにおいて、圧倒的なオリジナリティを持った音楽性がリスナーにも同業者にも衝撃を与えたバンド、バトルス。

その初期メンバーであり、バンドを脱退後も先鋭的な実験音楽家として高い評価を得ているタイヨンダイ・ブラクストンさんのお父さんは、実はフリー・ジャズ界の巨匠アンソニー・ブラクストンさんなのですね。

1945年に生まれたブラクストンさんは、伝統的なジャズと同時にジョン・ケージさんやカールハインツ・シュトックハウゼンさんといった現代音楽家から影響を受けたアルト・サックス奏者です。

彼が1968年にリリースした初のリーダー・アルバム『3 Compositions Of New Jazz』には、ブラクストンさんをはじめとするマルチ演奏者の3人を中心として創造された前衛的なセッションが収められています。

不可解な記号や数字のタイトルの時点で思わず二の足を踏んでしまいそうですが、勇気を出して「こちら側の世界」へと一歩踏み出してみてはいかがですか?

Solo Guitar Volume 1

Improvisation 4Derek Bailey

Derek Bailey ‎– Solo Guitar (full album) 1971
Improvisation 4Derek Bailey

イギリスが生んだ即興演奏のパイオニアであり、フリー・インプロヴィゼーションの代表的なギタリストと言えば、デレク・ベイリーさんです。

そもそも即興演奏とはその名の通り制約を設けずに演奏者の意思に沿って自在に演奏するものですが、音楽理論などが確立されていなかった太古の昔の音楽は、つまり即興演奏そのものであったと言えるかもしれません。

そんなことを念頭に置いて、ベイリーさんのソロ名義としては初となったアルバム『Solo Guitar Volume 1』を聴くと、また違った世界が見えてくるのではないでしょうか。

もともとはプロのギタリストとして熟練した腕前を持ったベイリーさんが、いわゆる商業音楽とは決別して自らが創始者の1人となったフリー・インプロヴィゼーションは、ギターのソロ演奏という形態で一般的に予想される音楽とは全く違うサウンドを生み出しています。

フリーキーなプレイの中で、突如「クラシカルなギター演奏」が差し込まれるところは、何となく英国人的ユーモアを感じさせますね。

Out to Lunch!

Hat And BeardEric Dolphy

アルト・サックス、バス・クラリネット、フルートを自在に操るマルチ・リード奏者であり、独創的なスタイルでジャズ史における巨人としてその名を残すエリック・ドルフィーさん。

オーネット・コールマンさんの名作『フリー・ジャズ』に参加するなど、ドルフィーさんはたしかにフリー・ジャズの歴史においても重要な仕事を残しているのですが、あくまで伝統的なジャズの文脈から端を発した前衛性、といった雰囲気があることが重要と言えそうですね。

ジャンルの枠組みの再構築ではなく、音楽理論を熟知した上で、アバンギャルドな創造性を展開していくというスタイルがドルフィーさんの音楽を唯一無二のものとしているのではないでしょうか。

そんなドルフィーさんが亡くなる数カ月前、1964年の2月に録音された『Out to Lunch!』は、全曲がドルフィーさんのオリジナル曲で構成されています。

ジャズの伝統とみずみずしい才能による革新性、フリー・ジャズらしい即興演奏と耳に残るフレーズが入り乱れるバンド・アンサンブルの妙は、自由奔放でありながらもがっちりした緻密性が感じ取れ、素晴らしい音楽体験を聴き手にもたらします。