恐ろしい音楽のススメ~実は怖いあの曲
聴いただけでぞくっとしてしまうような、恐怖を感じてしまう作用を持つのも音楽という芸術ジャンルの側面ですよね。
今回の記事では、怖い音楽をテーマに掲げてさまざまな音楽をピックアップ。
定番のホラー映画のテーマ曲からクラシック音楽を中心として、ロックやポピュラー音楽なども含めて幅広く選曲しています!
聴いているだけではとくに怖いと感じられない楽曲も、実は楽曲の背景を知れば途端に怖くなってしまう……そんな発見があるかも?
ぜひチェックしてみてくださいね。
恐ろしい音楽のススメ~実は怖いあの曲(1〜10)
ErlkönigFranz Schubert

重厚かつシリアスなピアノの音色を聴いているだけで、言葉にできない焦燥感や不安を味わえますよね。
世界的に最も知られているリートの1つである『魔王』は、ゲーテの詩をシューベルトが歌曲として用いたものが最も有名です。
デンマークの民間のバラードをもとにして、ゲーテが自由に再構築して1782年に発表した詩である『魔王』を、1815年に当時18歳のシューベルトが歌曲として作曲しているのですが、作品の真価はなかなか理解されず、出版までには紆余曲折あったそうですよ。
今では音楽の教材として日本でもよく知られている歌曲ですし、いろいろな場面でパロディや引用をされていますよね。
悲劇的なストーリーが持つ恐ろしさを極限まで表現したような圧巻のピアノ演奏はもちろん、基本的には1人の歌手が子どもと父、魔王、ナレーションの4役を担う技巧的な難しさも相まって、一度聴いたら忘れられない衝撃を聴き手に与えてくれます。
Friday the 13thHarry Manfredini

たとえ映画本編を見たことがない方であっても、13日の金曜日は何やら不吉といったイメージを持たれている方がほとんどでしょう。
ホッケーマスクをかぶった姿のジェイソンでおなじみ、1980年に公開された名作ホラー映画『13日の金曜日』のテーマ曲は、数あるホラー映画のサウンドトラックの中でもとくに有名な楽曲の1つであり、曲単体で聴いてみても背筋が凍るような恐怖を与えてくれる名曲です。
人のささやき声のような音が細切れに聴こえてくるのも有名で、これは「Kill her mommy」という劇中のセリフを基にしたものなのですね。
それがどのような意味を持っているのか、映画をご覧になった方であればよくご存じでしょう。
逆を言えば映画を見ていなければその意味は分からないのですが、興味を持たれた方はぜひ第一作目を見てその悲しい真実を知ってください。
交響曲第9番Ludwig van Beethoven

おそらく、日本で最も有名なクラシック音楽の定番でしょう。
「第九」という名前でもおなじみ、ベートーヴェンによる『交響曲第9番』は、日本の年末に行われるコンサートにおいて欠かせない楽曲としても知られていますよね。
とくに第4楽章における『歓喜の歌』を聴いたことがない、という人はおそらくほとんどいないのではないでしょうか。
作曲したベートーヴェン自身はタイトルを付けなかったそうなのですが、9という数字は単純にベートーヴェンが9番目に作曲した交響曲ということを表しています。
ではこの有名なクラシック音楽のどこが恐ろしいのかというと、この楽曲を作った後でベートーヴェンが亡くなってしまい、後世の作曲家にとっては「交響曲九番の呪い」などといった風説が流布して、9番目の交響曲を作曲したら命を落とすなどと恐れられていたのですね。
ほとんど都市伝説ではありますが、実際のエピソードとしてマーラーが10番目の交響曲に『大地の歌』というタイトルを名付けたといったものもあり、そういった背景を踏まえて聴くと少しぞくっとしてしまう……かも?
恐ろしい音楽のススメ~実は怖いあの曲(11〜20)
Cannibal HolocaustRiz Ortolani

この曲については、背景を知らない方にこそまずは聴かせてみたい楽曲の筆頭ですね!
温かみのあるアコースティック・ギターのフレーズ、ゆったりとした落ち着いたリズム、流麗なストリングスで奏でられるメロディはあまりにも美しく、何も知らないリスナーの心を癒してくれることは間違いないでしょう。
とはいえ、あくまでそれは「何も知らない方」に限りますよ。
イタリアが生んだ著名な作曲家、リズ・オルトラーニさんが手掛けたこちらの『Cannibal Holocaust』は、日本でも当時話題を集めた1980年公開の怪作『食人族』のテーマ曲です。
これを知ったら、そんなタイトルの映画になぜこの美しいテーマ曲が使われたのだと疑問に思う方も多くいらっしゃるはず。
ホラー映画やショッキングな作品にあえてこのような美しいテーマ曲を使う手法があり、まさにその代表的なパターンがこちらの楽曲なのですね。
この曲、劇中のとんでもないシーンで繰り返し何度も流れますから、美麗な旋律と恐ろしいシーンが重なり合って強烈な演出となっています。
映画自体は一般にはすすめられない作品ではありますが……興味のある方はぜひ!
TotentanzFranz Liszt
重厚極まりないピアノが生み出す神秘的かつ不穏な空気は、この楽曲ならではのものでしょう。
「ピアノの魔術師」とも呼ばれ、超絶技巧を持ち合わせたピアニストのフランツ・リストによって作曲されたもので、日本では『死の舞踏』という邦題でも知られています。
少しややこしいのが、同じく『死の舞踏』という邦題で著名なサン=サーンスの交響詩とは別の楽曲でありつつ、リスト自身がサン=サーンス版の『死の舞踏』に感銘を受けて、自身のオリジナル曲の『死の舞踏』とは別にサン=サーンス版の『死の舞踏』をピアノ独奏用編曲版として発表しているのですね。
今回紹介しているのは、原題が『Totentanz』というリスト作の楽曲であり、自身が編曲したピアノ独奏版です。
グレゴリオ聖歌『怒りの日』のフレーズを用いており、静と動のパートのコントラストがあまりにも美しくドラマチックです。
モチーフとなったという14世紀のフレスコ画『死の勝利』を眺めながら、この曲を聴いてみてはいかがでしょうか。
Goldberg Variations, BWV 988J.S.Bach

映画などのサウンドトラックとして起用されたがゆえに、恐怖と結びついてしまったクラシック音楽、実は結構ありますよね。
「音楽の父」と称される、バッハが1741年に発表したチェンバロのための変奏曲、俗称『ゴルトベルク変奏曲』として知られるこちらの楽曲もその1つでしょう。
楽曲としては高度な演奏技術が求められる作品であり、世に衝撃を与えた天才ピアニストのグレン・グールドさんによる名演をはじめとして、世界中の演奏家が挑戦し続けるクラシック音楽の傑作です。
同時に、ある映画を見た方であればこの楽曲はあまりにも不吉なものとして感じられるのではないでしょうか。
1990年に公開された大傑作映画『羊たちの沈黙』において、衝撃的なシーンでこの曲が使われており、恐怖を最大限にまで高める演出が成されているのです。
曲のイメージすら変わってしまうかもしれませんから、まだ映画をご覧になっていない方は要注意です。
Main TitleJerry Goldsmith

映画史に残る名作のサウンドトラックを多く手掛けた偉大な作曲家、ジェリー・ゴールドスミスさんが手掛けた名曲です!
1979年に公開された名作映画『エイリアン』のメイン・テーマ曲であり、劇的な展開や耳に残るメロディがないからこそ、重厚感や言い知れぬ不安と恐怖が聴き手の胸に残りますよね。
次作の『エイリアン2』で監督がリドリー・スコットさんからジェームズ・キャメロンさんへと変更され、作風も一変したことを考えると、音楽の担当もゴールドスミスさんからジェームズ・ホーナーさんへとバトンタッチしたことは必然だったと言えるのではないでしょうか。
宇宙船の中という閉鎖空間で展開していく恐怖は、やはり第一作目が突出していますし、ゴールドスミスさんの楽曲は忍び寄る恐ろしさをうまく表現していると感じます。
シリーズを通して音楽がどのように変化したのをチェックしてみるのも、おもしろいかもしれません!