悠久のときをこえて、日本の伝統楽器「尺八」が奏でる深い調べは、私たちの心に静寂と安らぎをもたらしてくれます。
古くから伝わる尺八曲には、自然の息吹や人々の思いが込められており、その音色は現代を生きる私たちの心も揺さぶります。
この記事では、心に響く尺八の名曲を集めました。
先人が紡いだ作品から、古典の響きと現代のエッセンスが調和した作品まで、幅広く選定しています。
和の心に触れたい方、日本の伝統音楽に興味をお持ちの方は、ぜひゆっくりとお楽しみください。
心に響く尺八の名曲集|心を揺さぶる日本の美しい調べ(1〜10)
息観尺八古典本曲

尺八古典本曲のなかでも、とりわけ禅的な性格が際立つめい想のための作品です。
奏者自身の呼吸そのものが音楽となり、低く長く続く一音一音に自己を深く見つめる精神性が込められています。
旋律は簡素でありながら、息遣いの微細な揺らぎと静寂ともいえる「間」が織りなす音世界は、聴く者を深い内省へと誘います。
本作は海外でも評価されている尺八のための作品。
この奥深い調べに耳を澄ませば、心が静まり安らいでいくのを感じられるでしょう。
箏・尺八二重奏曲「壱越」山本邦山

人間国宝にも認定された尺八奏者の山本邦山さん。
彼が作曲したこの箏と尺八のための二重奏曲は、日本の伝統音階「壱越調」を基盤に、急—緩—急から成る3楽章で構成されたています。
尺八が紡ぐりんとした旋律を箏が優しく支え、ときに緊張感を伴って対話するさまは、まるで静かな水面に広がる波紋のよう。
日本の伝統美と現代的な感性が織りなす音の世界に深くひたりたい方は、この美しい調べに耳を傾けてみてはいかがでしょうか?
都山流本曲「八千代」初代中尾都山

2本の尺八が対話するように旋律を奏で、荘厳で華やかな世界を創り出す祝賀の調べ。
1896年の創立から10周年を迎えた都山流を祝し、創始者の初代中尾都山さんが手掛けた作品です。
伝統的な「和」の音色に、西洋音楽の対位法的な掛け合いを取り入れた構成は、聴く人の心をひきつけます。
この楽曲は1916年頃に作られたもので、尺八音楽に合奏という新風を吹き込んだ初代中尾都山さんの革新性を感じられます。
お祝いの席はもちろん、気持ちを新たにしたい特別な日に聴いてみてはいかがでしょうか?
都山流本曲「紅葉」初世中尾都山

錦織りなす秋の京都を散策しているかのような、美しい情景が目に浮かぶ作品です。
尺八界に合奏という新風を吹き込んだ初世中尾都山さんが、1929年に洛西、高雄の紅葉に心動かされて生み出した尺八二重奏曲。
2管の尺八が追いかけるように旋律を奏でるカノンや、邦楽では画期的だった5拍子といった技法が特徴です。
そのリズムの揺らぎは、聴く人を秋の詩的な世界へと誘います。
秋の夜長、2本の尺八が織りなす音の対話にじっくりと耳を傾けてみては。
手向尺八古典本曲

静寂のなかから立ち上る一息に、心が洗われるような感覚を覚える尺八古典本曲。
亡き人を慰める慈愛と神仏への祈りが、音色そのものに宿っているといわれています。
この楽曲は、横山勝也さんの名盤『竹韻~横山勝也・尺八の世界』に収録されており、アルバムは2021年3月に配信という形で触れることができるようになりました。
慌ただしい日常から離れ、心を鎮めて深く自分と向き合いたいときに最適な1曲。
音と音との間に広がる「間」の美しさに、静かに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
篝火野村正峰

揺らめく炎を思わせる幻想的な調べが、未来への希望を感じさせる邦楽の名曲です。
古典を重んじながら、現代的な感性で新作を次々と生み出した箏曲家、野村正峰さんが手がけた作品の一つ。
1970年の大阪万国博覧会を祝して作られたこの楽曲は、当初は横笛のために書かれ、のちに尺八と箏が加わる編成へと発展しました。
尺八と箏が織りなす緻密なアンサンブルが、静寂の中に燃え立つ炎の揺らめきと、未来への祈りをドラマティックに展開させていく本作。
和楽器が紡ぐ幻想的な世界にひたりたい夜に、じっくり味わってみてはいかがでしょうか?
ドキュメンタリー映画「尺八・一声一世」主題曲き乃はち

伝統と革新を融合させるアーティスト、き乃はちさんが手がけた、ドキュメンタリー映画『尺八・一声一世』の主題曲です。
深く響き渡る尺八の音色が、壮大なサウンドと一体となり、聴く者の魂を静かに揺さぶります。
「一つの音に一つの人生を」というテーマが体現されたような、圧倒的な精神性と世界観が印象的。
映画監督がき乃はちさんの音楽に感銘を受け、映画制作を決意したというエピソードも納得の、力強い説得力を持っています。
壮大な自然に思いをはせたいときにピッタリの、感動的な1曲です。






