ドイツの前身であるプロイセン王国の時代に生まれた作曲家、エドゥアルト・フランクの楽曲の特集です。
自分の作品にストイックであったため作品の完成が遅く、一般的知名度が同年代に活躍した作曲家達より劣る面もありますが、それだけ深く練り上げられた楽曲は確かな評価を受け今に伝わっています。
フランクの名曲。人気のクラシック音楽(1〜10)
パストラール ホ長調 作品19César Franck

1863年に作曲されたこの曲は、セザール・フランクの代表作の一つ。
「パストラール」とは「牧歌的な」という意味で、オルガンの深い響きと穏やかな旋律が織りなす、牧歌的な風景が感じられます。
自然の美しさや田園の静けさを表現しており、オルガンの豊かな音色を存分に活かしています。
ゆったりとしたテンポで流れるメロディは、まるで静かな時間の中を散歩しているかのよう。
高音部と低音部で交互に現れる旋律や、カノン風の対旋律が特徴的で、聴く人の心に深い感動を与えます。
クラシック音楽ファンはもちろん、自然や静けさを愛する人にもオススメの1曲です。
ピアノ三重奏曲第3番César Franck

19歳の若きフランクが手掛けたピアノ三重奏曲。
ロ短調の調性を基盤に、重厚で情熱的な曲調が特徴的です。
オルガニストとしての背景を感じさせる豊かな和声と、ロマン派音楽の影響を受けた感情豊かな旋律が見事に融合しています。
3楽章構成で、第1楽章のアレグロから始まり、第2楽章のアダージョを経て、第3楽章のモデラートへと展開。
とくに第2楽章では、フランクの繊細な感性が存分に発揮されています。
1842年に作曲され、フランクの初期の才能と情熱が詰まった意欲作。
室内楽愛好家にぜひ聴いていただきたい1曲です。
ピアノ五重奏曲 ヘ短調César Franck

フランクの魂の奥底から湧き出る情熱を感じさせる名作。
冒頭のモチーフが全曲を貫き、有機的な統一感を生み出しています。
第1楽章の力強い序奏、第2楽章の深い感情表現、第3楽章の焦燥感ある展開と、ドラマチックな音楽の流れは聴く者の心を揺さぶります。
1880年1月の初演時、ピアノを担当したサン=サーンスが曲の内容に不満を示したというエピソードもありますが、作曲の背景には複雑な人間関係があったそう。
深い感情と豊かな音楽性にあふれた本作は、室内楽ファンならずとも、心に響く音楽を求める方にもオススメの1曲です。
ヴァイオリンソナタ イ長調César Franck

1886年に完成されたこの作品は、ヴァイオリンとピアノのための傑作ソナタです。
優雅で穏やかな第1楽章から始まり、情熱的な第2楽章、自由な形式の第3楽章を経て、輝かしいフィナーレへと至ります。
循環形式を採用し、同一のモチーフが全楽章を通じて繰り返される手法が特徴的。
ピアノとヴァイオリンが対等な関係で演奏される点も魅力的で、二重奏曲としての完成度が高いのです。
理知的な冷静さと内面の情熱が融合した楽曲として、多くの演奏家に愛され続けています。
室内楽ファンにぜひオススメしたい1曲ですね。
交響曲 ニ短調César Franck

フランスの交響曲の代表作として知られる本作。
全3楽章から成り、循環形式を採用しています。
冒頭の低弦が奏でる問いかけるような動機は全曲を貫いて現れ、曲全体に統一感をもたらしています。
特徴的なのは第2楽章で、緩徐楽章とスケルツォを融合させた独特の構成となっており、イングリッシュホルンの美しい旋律が印象的。
ドイツ風の分厚く渋い音色やオルガン風の響きが多用され、作曲家の宗教的で哲学的な内面性が反映された深遠な曲調となっています。
1889年2月の初演時は評価が別れましたが、現在では19世紀後半の重要な交響曲として高く評価されています。
交響的変奏曲César Franck

ピアノとオーケストラのための作品として、1885年に作曲されたこの曲。
単一のテーマを基にした変奏形式で展開され、ピアノとオーケストラが交互に、または共に、テーマを探求していきます。
最初にチェロによってテーマが提示され、その後ピアノとオーケストラによって複雑で表情豊かな音楽へと発展。
リズミカルで調和的な美しさを示しつつ、感情的な深みも表現されています。
ピアノ演奏には高い技術が求められ、表現の幅広さと深い感情表現が求められます。
豊かなハーモニーや緻密なテクスチャーが特徴的で、音楽的な複雑さが評価されるこの曲。
音楽愛好家やクラシック音楽の学生にとって、その構成や展開の仕方を学ぶ上で非常に価値のある1曲です。
交響詩「プシシェ」César Franck

古代ギリシャ神話を題材にした交響詩。
1888年3月にパリで初演された本作は、フランクの晩年の傑作として知られています。
プシュケとエロスの愛の物語を、豊かなオーケストレーションと合唱で描き出しています。
夢幻的な第1部、官能的な第2部、そして苦悩と救済を表現した第3部と、物語の展開に沿って音楽が進行。
半音階的な和声進行や循環形式など、フランクらしさが随所に見られますね。
神秘的で崇高な愛の世界を体験したい方にオススメの1曲です。