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【洋楽】ポストロックのすすめ~基本の名盤・オススメの1枚

従来のスタイルで鳴らされるロックの方法論とは違う、さまざまなアイデアや実験的な趣向を凝らして表現する音楽ジャンルがポストロックです。

定義としてはかなり曖昧な上にサブジャンルも多々あるのですが、ポストロックという括りの中でも世界的な成功を収めたバンドやアーティストは少なくありませんし、ここ日本でもポストロックの方法論に影響を受けた多く存在しているのです。

今回の記事では、最近ポストロックに興味を持ち始めた洋楽ファンに向けて「まずはこの1枚」な名盤の数々を一挙ご紹介します!

ポストロック全盛期の1990年代から2000年代のアルバムを中心としたラインアップとなっておりますから、ぜひチェックしてみてくださいね!

【洋楽】ポストロックのすすめ~基本の名盤・オススメの1枚(6〜10)

The Earth Is Not A Cold Dead Place

First breath after comaExplosions in the sky

アメリカはテキサス出身のエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイは、ポストロックと呼ばれるバンドの中でも、長尺な楽曲の中で静と動のパートをうまく使ったドラマチックなアンサンブルが特徴的な、初期のモグワイ辺りを始祖とする轟音ギターを鳴らすグループの代表的な存在です。

ポストロックやエクスペリメンタル系の作品を多くリリース、日本のMONOやENVYといったバンドの作品も扱っている老舗のレーベル「Temporary Residence」の看板バンドであり、彼らに影響を受けた後続のバンドも多くいるのです。

彼らのアルバムはどれも完成度が高く、作品によって轟音ポストロックにとらわれないサウンドにも挑戦しているのですが、本稿では最高傑作として評価されることも多い2005年リリースの名盤サード・アルバム『The Earth Is Not The Cold Dead Place』を紹介しましょう。

繊細なギターのアルペジオはさらに研ぎ澄まされ、轟音ギターは初期の荒々しさや重苦しさとは違う、どこか救いすら感じさせる眩い光が差し込まれたような響きでリスナーを包み込んでいきます。

1曲1曲の完成度も高く、彼らの名前が広く知られるきっかけとなった作品であり、最高傑作と呼ばれることも多い1枚ですから、初めて彼らのサウンドを聴く方にもオススメと言えるでしょう。

轟音ギターのカタルシスをもっと味わいたい、という方は前作『Those Who Tell The Truth Shall Die,Those Who Tell The Truth Shall Live Forever』を推薦します!

Mogwai Young Team

Mogwai Fear SatanMogwai

Mogwai – Mogwai fear Satan (High Quality)
Mogwai Fear SatanMogwai

極端な静寂と耳をつんざくほどの轟音ギターが鳴らされるすさまじいバンド・アンサンブルで、シーンをあっと言わせたのがスコットランドはグラスゴー出身のモグワイです。

ここ日本における人気・知名度も抜群で、今やポストロックという枠内をこえて数え切れないほどのバンドへ影響を与えた偉大な存在ですよね。

作品をリリースするごとに音楽性にも変化が見られ、インストゥルメンタル主体ではありますが、曲によってはボーカルを取り入れるなど常に意欲的な音楽的冒険を忘れない彼らですが、今回はトレードマークと言える強烈な轟音ギターが味わえる初期の大傑作ファースト・アルバム『Mogwai Young Team』を紹介します。

富士銀行恵比寿支店の写真を使ったアルバム・ジャケットが問題視され、国内盤ではロゴの部分が削除されたという曰くつきの作品でもあるのですが、内容の素晴らしさは2020年代の現在も色あせないどころか、このアルバムがなかったら生まれなかった後続のバンドも多くいただろう、と本作を聴いた方であれば誰もが納得することでしょう。

ゆったりと展開していくドラマチックな楽曲の中で、ハードコアから影響を受けた暴力的なまでのフィードバック・ノイズは明確な説得力を放ち、夢想的なシューゲイザー的な轟音とは全く違うというのも強調しておきたいところ。

ライブでも定番の楽曲であり、アルバムのラスト曲にして16分をこえる大作『Mogwai Fear Satan』を聴けば、この楽曲を当時20歳そこそこのメンバーが作り上げたのか……と思わず脱帽してしまうはず!

F♯ A♯ ∞

East HastingsGodspeed You! Black Emperor

1976年に暴走族をテーマとした日本のドキュメンタリー映画『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』からそのグループ名を拝借した、という時点で普通のバンドではないことが強烈に伝わってきますよね。

カナダ産ポストロックの聖地、モントリオール出身のゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラーは、1994年に結成された大所帯のバンドであり、大作指向で実験的な音楽性と政治的な主張を込めた楽曲およびアートワークなど、独自のスタンスで活動を続ける存在としてシーンに衝撃を与えました。

2003年に活動休止するも2010年には活動を再開、2020年代に至る今も彼らにしか成し得ない音世界で世界中の熱狂的なファンを喜ばせ続けています。

本稿で紹介しているのは、1997年にリリースされた記念すべきファースト・アルバム『F♯ A♯ ∞』です。

10名ほどのミュージシャンが参加した本作は、全3曲で組曲のような構成となっており、フィールドレコ―ディングやサンプリングを使った重苦しく不穏な空気感と、伝統的なロック・バンド的な楽器以外にもチェロやバイオリンなども使われた大所帯ならではの複雑なアンサンブル、この世の終わりのような静寂から感情の揺れをそのまま形としたような爆発的なノイズまで、他に類を見ないサウンドの衝撃度は今も語り草となっておりますね。

この黙示録の如き世界観に引きずり込まれたら最後、彼らのとりことなってしまうでしょう!

In a Safe Place

WindowThe Album Leaf

トータスなどに代表されるシカゴ音響派、そしてモグワイなどの轟音ギターで魅せる静と動の世界を持ったポストロックとされるバンドとはまた違う、繊細なエレクトロニカ的な要素と美メロが際立つポストロックを鳴らして高い評価を受けているのが、カリフォルニアはサン・ディエゴ出身のジミー・ラヴェルさんによるソロ・プロジェクトのアルバム・リーフです。

ジミーさんはもともとトリステザというポストロック系のバンドや、グラインドコアやハードコア・パンクの要素を独自に織り交ぜた音楽性と昆虫の衣装でのライブ・パフォーマンスで知られるザ・ロカストなどのメンバーとして活動していた経歴を持ち、1998年に自身のソロ・プロジェクトとしてスタートさせたのがアルバム・リーフなのですね。

初期は知る人ぞ知る存在でしたが、2004年にあのシガー・ロスの所有するスタジオで録音された大傑作サード・アルバム『In a Safe Place』が高く評価され、以降は美メロ系のポストロック好きには周知の存在としてここ日本でも熱心なファンを得るまでに至りました。

『In a Safe Place』はマルチ・インストゥルメンタリストであるジミーさんを中心として、ヨンシ―さんを除くシガー・ロスのメンバーも参加、アイスランドならではのひんやりとした叙情性と、音の細部にまでUSハードコアの出自を感じさせる独特の緊張感が見事に融合した叙情系ポストロックの名盤。

必然として鳴らされるグリッチ・ノイズ、数曲で聴くことのできるジミーさんの繊細なボーカル入りの曲も含めて、全曲最高です!

American Don

Fire Back About Your New Baby’s SexDon Caballero

Don Caballero – Fire Back About Your New Baby’s Sex
Fire Back About Your New Baby's SexDon Caballero

ポストロックに興味を持ち、調べていく中で「マスロック」なるジャンルを発見して一体どんなジャンルなのかな、と思われた方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。

一般的にはキング・クリムゾンなどの超絶技巧のプログレやスティーヴ・ライヒさんなどのミニマル・ミュージックなどからも影響を受け、変拍子満載の複雑なリズム展開やギター・フレーズ、不協和音にノイズがちりばめられたサウンドが特徴とされるジャンルです。

実は商業的に成功しているバンドの中でもマスロック由来のアンサンブルを取り入れているバンドも多く、掘り下げるとなかなか奥深いジャンルなのですね。

本稿の主役であるドン・キャバレロは、ドラマーのDamon Cheさんを中心として1991年に結成されたマスロック~ポストロック系の代表的なバンドの1つ。

後にバトルスを結成するイアン・ウィリアムスさんが在籍していたことでも知られていますね。

現在も活動を続ける彼らが最初の解散前に発表した通算4枚目のアルバム『American Don』は、変則的なギターのリフと手数の多いドラムスを軸として複雑怪奇に展開していく楽曲展開が実にクールでカッコ良く、ピンと張りつめた緊張感の中で織り成すバンド・アンサンブルの妙は今もなお色あせることはありません。

インストを聴き慣れない方には最初は戸惑いもあるかもしれませんが、この音のおもしろさに気付けば、必ずや音楽の趣味も広がっていくことでしょう。