現代音楽(芸術音楽)の名曲。おすすめの人気曲
現代音楽と言われても、そういった音楽ジャンルがあること自体知らない、という方が大多数なのではないかと思います。
知識として多少は知っていたとしても、敷居が高く難解なイメージを抱かれている方も多いのではないでしょうか。
クラシックのみならず、ミニマル・ミュージックからアヴァン・ポップ、フリージャズ、ノイズ・アヴァンギャルドにいたるまで、現代音楽の影響は多くの分野で根付いています。
そんな現代音楽の名曲とされる楽曲を軸として、幅広い分野における楽曲を選出してみました。
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現代音楽(芸術音楽)の名曲。おすすめの人気曲(1〜10)
交響曲第3番 「悲歌シンフォニー」Henryk Gorecki

たとえこの楽曲が持っているバックグラウンドを何も知らなかったとしても、ゆったりとしたテンポでじっくりと展開していく楽曲構成の中に身を委ねて、深い悲しみを秘めた旋律の美しさを聴いていれば自然に厳粛な気持ちにさせられるのではないでしょうか。
『悲歌の交響曲』という邦題でも知られているこちらの交響曲は、ポーランド出身の現代音楽家ヘンリク・グレツキさんが1976年に作曲した作品です。
20世紀後半で最も成功した交響曲とも言われており、グレツキさんの代表作の1つでもあります。
初期のグレツキさんに見られた前衛的な作風は幾分か抑えられ、反復していくミニマリズムと沈黙、信仰心に基づいた宗教音楽的な側面を押し出して、従来の交響曲の持つ形式からは逸脱しながらも、親しみやすい古典的なフレーズを多く備えた素晴らしい作品となりました。
現代音楽そのものに興味がないという方であっても、クラシックが嫌いでなければ一度は触れていただきたい普遍的な魅力があると言えましょう。
こういう作品はCD録音もいいですが、やはりコンサート会場で体験したいですよね。
月に憑かれたピエロArnold Schönberg

『月に憑かれたピエロ』という邦題でも知られるこちらの作品は、もともとはベルギーの詩人が発表したフランス語の詩集であり、ドイツ語訳のものを題材とした音楽作品。
複数の作曲が曲付けしている中で、最も有名な作品が、オーストリアの作曲家であるアルノルト・シェーンベルクさんが手掛けたものです。
シェーンベルクさんはいわゆる調性音楽を脱した「十二音技法」を創始したことで知られ、アメリカに移住してからは弟子にあのジョン・ケージさんを持つなど、現代音楽家に大きな影響を与えた存在です。
今回紹介している『月に憑かれたピエロ』は、十二音技法を確立する以前の作品であり、調性を放棄した無調が提示された作風で、現代音楽の傑作のみならず、20世紀の音楽史において重要な作品の1つです。
一般的な室内楽から著しく脱した不協和音の連続、歌と詩の朗読の中間のような歌曲が絡み合い、複雑で奇怪な世界を作り上げています。
美しい旋律は皆無、決して心地良いものではありませんが、他の音楽では味わえない音楽的な体験として、日本語の訳詞を片手にぜひ挑戦してみてください。
断ち切られた歌Luigi Nono

イタリアはヴェネツィア出身のルイジ・ノーノさんは、戦後の現代音楽~前衛音楽において中心的な役割を果たした作曲家です。
20世紀ドイツ最大の交響曲作家とも言われるカール・アマデウス・ハルトマンさんが、バイエルン放送と共同で主催した現代音楽の演奏会「ムジカ・ヴィーヴァ」でその名を知られるようになったとも言われており、いわゆるセリエル技法を習得した初期から電子音楽に興味を持ち始めた中期、新たな地平へと進んだ後期で作風が違うことでも有名な存在ですね。
エドガー・ヴァレーズさんやカールハインツ・シュトックハウゼンさんといった先鋭的な作曲家と交流しながらも後に決別している、という点もノーノさんが独自の道を歩むタイプであることを物語るエピソードと言えそうです。
共産主義者でもあり、政治的な思想を作曲へと落とし込むタイプのノーノさんが1955年から1956年にかけて作曲した『Il canto sospeso』は、彼の代表作と言える声楽作品、カンタータです。
『断ち切られた歌』という邦題のこの作品は、戦時中の抵抗運動の闘士たちによる遺書からインスパイアされ、十二音技法と独自のセリエル技法を駆使したもので、当時大ヒットを記録したそうです。
音だけでなく、その背景にあるメッセージ性はぜひ知っておくべきものと言えるでしょう。
現代音楽(芸術音楽)の名曲。おすすめの人気曲(11〜20)
海の音調への練習曲Salvatore Sciarrino

何はともあれ、この楽曲については演奏動画をご覧いただきたいです。
カウンターテナー、フルート四重奏、サクソフォン四重奏、パーカッションという編成に加えて、なんと100本のフルートと100本のサクソフォンで表現する壮大な音響実験の如き作品なのですね。
200人以上の奏者がステージに立つ姿だけでも壮観ですが、そもそもこれをやろうという発想自体に感服してしまいます。
原題は『Studi per l´Intonazione del Mar』というこちらの楽曲を生み出したのは、イタリア出身の現代音楽作曲家、サルヴァトーレ・シャリーノさん。
基本的に独学で作曲を学ばれたそうで、常識的なクラシック音楽の理論では絶対に表現できない、シャリーノさんの独創的な作品群は高く評価されています。
こちらの楽曲も、いわゆるメロディアスで美しいフレーズなどは皆無、まさしく海そのものが生み出す音の調べであり、できればCD音源ではなく実際にホールで体験すべき音世界であると言えましょう。
世の終わりのための四重奏曲Olivier Messiaen

1908年生まれ、フランスはアヴィニョン出身のオリヴィエ・メシアンさんは20世紀を代表する現代音楽家というだけでなく、オルガン奏者やピアニストでもあり、音楽教育者としても業界に多大なる貢献を果たした偉大な人物です。
メシアンさんの教えを受けた学生は、ピエール・ブーレーズさんやカールハインツ・シュトックハウゼンといった著名な方々がいることだけ見ても、メシアンさんが音楽史においてどのような立ち位置にいるのかがわかるというものでしょう。
そんなメシアンさんは作曲家としても多くの作品を残しておりますが、今回は第二次世界大戦中に収容所で捕虜となっていた過酷な時期に作曲された『世の終わりのための四重奏曲』を紹介しましょう。
ヴァイオリン、クラリネット、チェロ、ピアノという異色の編成で演奏され、新約聖書「ヨハネの黙示録」から着想を得た宗教的な背景を持つ室内楽の大作です。
作品そのものの革新性や素晴らしさはもちろん、特殊な状況下で作曲された歴史的事実やどのように初演を迎えたのかなど、興味のある方はぜひご自身で調べてみてくださいね。
Music for 18 MusiciansSteve Reich

現代音楽というカテゴリーの中で、ミニマル・ミュージックと呼ばれるジャンルが存在します。
クラシック音楽を源流に持ったミニマル・ミュージックは、ミニマルという言葉が持つ意味の通り、音の動きを最小限に抑制した上で、1つのパターンが反復していく手法で生み出される音楽。
後のミニマル・テクノなども、そういったミニマル・ミュージックの音楽的方法論を取り入れたジャンルの1つです。
そんなミニマル・ミュージックを代表する作曲家、スティーヴ・ライヒさんの名曲『18人の音楽家のための音楽』を紹介しましょう。
1974年の5月から1976年の3月にかけて作曲され、複数のモチーフが反復しながら少しずつ楽曲が変化していくミニマル・ミュージックの基本的な音楽構成を持ちながらも、タイトル通り演奏には大規模な編成を要求され、音楽の歴史に新たな可能性を生み出した重要な作品と言っても過言ではないでしょう。
難解のようで意外に聴きやすく、既存のメロディとは違う豊潤な響きを持ったフレーズが繰り返される中で、受け手は体験したことのない世界の扉を開く事となるでしょう。
THE HEART ASKS PLEASURE FIRSTMichael Nyman

スティーヴ・ライヒさんなどに代表されるミニマル・ミュージック界における著名な作曲家であり、映画音楽としても大成、音楽評論家の顔も持つイギリス出身のマイケル・ナイマンさん。
音楽評論の中で初めて「ミニマル」という概念を持ち込んだのもナイマンさんであり、実験音楽についての研究論文などは、後の現代音楽評論にも大きな影響を与えています。
そんなナイマンさんの名前を世界的なものとして、ミニマル・ミュージックに興味がない層へもその才能を知らしめた作品と言えば、1992年に公開された名作映画『ピアノ・レッスン』の映画音楽でしょう。
とくにピアノ・ソロ曲で『楽しみを希う心』という邦題でも知られるこちらの楽曲は際立って美しく、ヒーリング・ミュージックとしても大人気となりました。
寄せては返す波のように反復していくメロディの素晴らしさ、圧倒的なエモーションの洪水の中で味わう音楽体験は極めて特別なものと言えます。
未見の方は、ぜひ映画本編もチェックしてみてくださいね。





