ロック好きにもオススメ!~モダン・ブルースの名盤
ロックンロールやジャズのルーツと呼ばれるブルースの誕生は、19世紀後半にまでさかのぼります。
いわゆる戦前ブルースとも称されるデルタ・ブルースやカントリー・ブルース、戦後シカゴから発達したエレクトリックを用いたシカゴ・ブルースやモダン・ブルースなど、その形式はさまざまであって一口で語れるものではありません。
今回の記事では、2020年代の今も多くのミュージシャンがそのスタイルや魂を受け継ぐ、ブルースの名盤をご紹介します。
初心者の方でも聴きやすいモダン・ブルースをメインとしたラインアップとなっておりますので、日ごろロックを聴かれている方であっても、入りやすい内容となっておりますよ!
ロック好きにもオススメ!~モダン・ブルースの名盤(1〜10)
All Your LoveMagic Sam

1937年生まれのマジック・サムさんは、モダン・ブルースの時代の幕開けを告げる重要な存在であり、その素晴らしい才能で将来を期待されながらも32歳という若さでこの世を去った伝説的なブルースマンです。
アメリカはミシシッピ州で生まれたマジック・サムさんは、1950年にシカゴへと移住後に音楽活動を始め、1957年にはブルースの名盤を多くリリースしたレーベル、コブラ・レコードから音源を発表しています。
その後は紆余曲折ありながらも、1967年に満を持して発表されたオリジナル・アルバムが、こちらの『West Side Soul』です。
ブルースの歴史の中でもとくに評価の高いアルバムであり、まさにブルースの世界の扉を開く最初の1枚にふさわしいアルバムと言えましょう。
オープニング・ナンバーの『That’s All I Need』からごきげんなソウル風のポップなナンバーからスタートする本作は、ブルース初心者であってもとっつきやすく、聴きやすい内容です。
いなたさとメロディアスさとが同居したギター・リフの応酬、迫力のボーカル、すべてにブルースの魂が込められた、荒々しくもみずみずしい見事な傑作!
スタンダードナンバーとして知られる『Sweet Home Chicago』は、本作の収録バージョンから広く知られるようになったそうですよ。
Somebody’s Acting Like a ChildJohn Mayall

ジョン・メイオールさんは、ブリティッシュ・ブルースの重要人物として知られる凄腕のミュージシャンです。
ピアノやオルガンを巧みに操り、時にはギターも弾くマルチな才能の持ち主なんですよ。
1968年にリリースされた『Blues from Laurel Canyon』は、ジョン・メイオールさんのソロ・デビュー作。
ロサンゼルスのローレル・キャニオンでの体験をもとに作られたこのアルバムは、ブルース・ロックの名盤として高く評価されています。
録音はわずか3日間で完了したそうですが、その短期間で素晴らしい作品が生まれたのは驚きですね。
2,024年の7月、90歳で亡くなるまで現役のブルースマンとして駆け抜けたレジェンドの若き日の音楽にぜひ触れてみてはいかがですか。
Have you ever loved a womanFreddie King

ブルース・ギタリストの歴史には、3人の偉大な「キング」が存在します。
B.B.キングさん、アルバート・キングさん、そしてフレディ・キングさん。
3人のキングの中では最も若い年齢だったフレディさんはテキサス出身で、メタルピックとプラスチックのサムピックを併用して弾くようにかき鳴らす攻撃的なギター・スタイルは「テキサスの弾丸」と称され、いわゆるたすき掛けではないギターの持ち方は「テキサス掛け」と呼ばれたそうです。
最高のブルースマンであり、ロック的なフィーリングを兼ね備えたフレディさんのプレイは、エリック・クラプトンさんやデュアン・オールマンさん、ジェフ・ベックさんといったそうそうたる面々に大きなインパクトと影響を与えました。
自身が作曲した優れたインスト曲も多くリリースしており、キャリアの後年はロック色も強くなっていくフレディさんが1961年に発表したデビュー作『Freddy King Sings』は、タイトル通りフレディさんのギターだけでなく歌声も楽しめるアルバムです。
ストレートな王道のブルースであり、演奏も歌も文句なし、アルバムとしての完成度も高い1枚ですね。
後のブルース・ロックへどのような影響を与えたのかを意識しながら聴いてみれば、さまざまな発見があるかもしれません!
Chicago BoundJimmy Rogers

シカゴ・ブルースの父とも呼ばれるマディ・ウォーターズさんの片腕的な存在として活躍し、シカゴ・ブルース創成期において重要な役割を果たしたブルース・ギタリストがジミー・ロジャーズさんです。
今回紹介している『Chicago Bound』は、ジミーさんが1950年代に名門チェス・レコードで録音した音源を集めた編集盤で、オリジナルは1970年にリリースされた作品です。
マディ・ウォーターズさんやリトル・ウォルターさんといった、そうそうたるブルースマンが参加した本作は、気の合う仲間とほろ酔い気分でセッションしたようなラフな雰囲気がとてもステキなのですね。
これぞブルースと呼べる楽曲であっても、ブルースと言われてイメージされるようなだみ声とは一味違うさわやかなロジャーズさんの歌声もあって、ブルース初心者にも優しい作品と言えそうです。
表題曲を始めとして『That’s Alright』や『Walking By Myself』など、ブルース定番の名曲も収録されております!
The Sky Is CryingElmore James

アルバート・キングさんを始めとする多くのブルース・ミュージシャンが取り上げ、エリック・クラプトンさんなどの有名なロック・ミュージシャンも好んでカバーしたブルースの名曲『Dust My Broom』で知られるエルモア・ジェームスさん。
ボトルネック奏法の第一人者としても著名で、独特のスライド・ギターは先述したエリック・クラプトンさんやジミ・ヘンドリックスさんにデュアン・オールマンさんといった偉大なギタリストへ多大なる影響を与えています。
スティーヴィー・レイ・ヴォーンさんが愛情を込めてカバーした、エルモア・ジェームスさんのもう一つのスタンダードナンバーである名曲をタイトルに冠した『The Sky is Crying』は、エルモアさんが亡くなった直後の1965年にリリースされた作品です。
1960年から1961年までの録音を収録しており、ミュージシャンとして脂の乗ったエルモアさんの名演が存分に楽しめる1枚となっております。
Born Under a Bad SignAlbert King

何はともあれ、アルバムの表題曲にしてオープニングを飾るナンバー『Born Under a Bad Sign』のインパクトが強烈です!
ソウル~R&Bの名門中の名門レーベル、STAXを代表する名盤の1つである本作は、ブルース・ギタリストの3大キングと称されるアルバート・キングさんが、レーベル専属のスタジオ・バンドであるブッカー・T&ザ・MG’sとともに発表した1967年のアルバムです。
ブルースを下敷きとしながらもホーン・セクションなども交えた洗練されたソウルフルなサウンドで、名曲ぞろいの本作はブルースを初めて聴くという方であっても抵抗感なく楽しめるはず。
アルバート・キングさんによるむせび泣くようなチョーキングが特徴的なギター・プレイは著名なロック・ギタリストにも大いにインスピレーションを与え、冒頭で触れた楽曲『Born Under A Bad Sign』はアルバムリリースの翌年、1968年に英国ブルース・ロックの代表的なバンドであるクリームがカバー。
ヒットを記録したことで、楽曲の知名度も上がりました。
そういった点を踏まえても、本作はロックがお好きな方にもぜひ聴いてほしいモダン・ブルース・アルバムの傑作だと言えるのです。
First Time I Met the BluesBuddy Guy

1950年代から活動を始めた大ベテランながら、2018年に完全な新作アルバム『The Blues Is Alive and Well』をリリースしたことも記憶に新しいバディ・ガイさん。
シカゴ・ブルースの代表的なブルース・ギタリスト兼シンガーであり、商業的にも大きな成功を収め、7回のグラミー賞受賞という輝かしい経歴を持つガイさんの名盤であれば、1991年に発表された『Damn Right, I’ve Got The Blues』を挙げられる方も多いでしょう。
今回は、若き日のガイさんのキレッキレな演奏が楽しめる1960~64年の録音を収録した編集盤の『I Was Walking Through The Woods』を紹介します。
ブルースの名門チェス・レコード在籍時、20代のガイさんによるスリリングなギター・プレイと熱きエモーションは、シカゴ・ブルースの基本形であり、ブルースのみならずロック・シーンに絶大なインパクトを与えたのです。
モダン・ブルースの歴史を知る上で欠かせない作品、と言っても過言ではないでしょう。





