美しすぎるクラシックピアノの名曲。心洗われる繊細な音色の集い
ピアノは、弾き手や表現方法によってさまざまな表情に変化する魅力的な楽器です。
繊細でいてダイナミックな優美さや、言葉には表せないような深みなど、その多彩な音色と豊かな響きは、ピアノ1台でオーケストラに匹敵するほどと言われています。
今回は、そんなピアノの音色を十分に堪能できる作品の中から、「美しさ」にフォーカスした曲を選びました。
ピアノを演奏するのがお好きな方も、鑑賞するのがお好きな方も、繊細な音のひと粒ひと粒を味わいながら、ピアノの魅力に浸っていただけたら幸いです。
美しすぎるクラシックピアノの名曲。心洗われる繊細な音色の集い(71〜80)
12の歌 作品21 第7曲「ここは素晴らしい場所」Sergei Rachmaninov

原曲は、ロシアの大作曲家セルゲイ・ラフマニノフが、妻のナターシャへ捧げた歌曲作品です。
ロマンティックな雰囲気とメランコリックな雰囲気が融合したとても美しい曲です。
シンプルな作品でありながら、思わず涙があふれそうになるメロディは、アンコール曲にもぴったり。
この曲には、E.ワイルドなどが華やかな編曲を施した版もあります。
ぜひ弾いてみてくださいね。
ノクターン 変ニ長調 Op.37Aleksandr Glazunov

グラズノフはロシアの大作曲家たちの良い部分を多く吸収した作曲家です。
彼の《ノクターン》はそれほど有名ではありませんが、ロシア的な骨太の音と、ショパンのようにメランコリックなメロディーが溶け合い、特別な美しさを備えています。
愛の悲しみKreisler=Rachmaninov

フリッツ・クライスラーの名作『愛の悲しみ』。
本作はヴァイオリンとピアノのための楽曲で、『愛の喜び』という作品と対をなす存在として作曲されました。
難易度の高い作品というわけではありませんが、演奏効果の高さをほこることで知られており、多くの演奏家によって、現在でも頻繁に演奏されています。
本作と『愛の喜び』『美しきロスマリン』は3部作ですので、合わせて聴いてみてください。
トロイメライRobert Schumann

ヘ長調の4分の4拍子で紡がれる美しい夢見るような旋律は、聴く人の心を優しく包み込みます。
アルバム『Kinderszenen』の中から生まれたこの楽曲は、1839年2月にライプツィヒで出版され、映画『転校生』のオープニングとエンディングで使用された思い出が深い1曲です。
穏やかで透明感のある音色が心に染み入り、まるで子供の頃の純粋な感情や大人になってからの郷愁を呼び起こすかのよう。
本作は4小節の旋律が8回繰り返される中で、和声の変化や音域の広がりによって、夢の中での情景の移ろいを見事に描き出しています。
時に物憂げな表情を見せながらも、最後は温かな余韻を残して終わります。
ゆったりとした演奏時間ながら、深い感動を呼び起こす芸術性の高い作品なので、心静かに音楽に浸りたい方におすすめです。
ベルガマスク組曲第1曲「前奏曲」Claude Debussy

クロード・ドビュッシーの作品の中でも、親しみやすい曲想で知られる『ベルガマスク組曲』。
第1曲『前奏曲』は、光が差し込むような明るいメロディーから始まり、教会音楽の旋法を使った危うい雰囲気の中間部を経て、再び目の前がパッと開けたように、冒頭のテーマが戻ってきます。
ドビュッシー作品の中には、調性という型にはまらない理解が難しいピアノ曲もありますが、この曲は調性感がありイメージを膨らませやすいため、比較的挑戦しやすい作品といえるでしょう。
グノシェンヌ第1番Erik Satie

悲しんでいたり悩んでいたりする時に聴きたい曲。
どうしようもないことで心がモヤモヤして、何も手がつかない。
その時にこの曲の旋律がすっと心に入ってきます。
いったん考えるのをやめて、ピアノに耳を傾けてみてください。
重い気分がすぐに変わるわけではないけど、マイナス思考のループにおちいらずにすみますよ。
この曲の淡々としたテンポが、がんじがらめになった思考をほぐしてくれるのです。
無言歌集 第1巻 Op.19 第1曲「甘い思い出」Felix Mendelssohn

なめらかに流れるような16分音符の伴奏と、優美な旋律が叙情的で心地よい『甘い思い出』は、メンデルスゾーンの有名なピアノ曲集『無言歌集』の中の1曲です。
有名な『春の歌』あたりと比べると知名度は劣るかもしれませんが、彼の素晴らしいメロディセンスが際立つ作品です。
楽曲の繊細なテーマが際立たせられるよう、16分音符の伴奏は軽く、メロディは指を立たせて音色を意識しながら弾いてみてくださいね。
たっぷりとペダルを踏み、豊かな響きをつくるイメージも持ってみるとより美しい演奏に仕上がりますよ。